キャリアカウンセラーの山口です。
この仕事をしていると幅広い相談者の方から頻繁に聞かれる質問があります。
「今、どのようなことをしておけば、この先役に立つでしょうか?」
「将来のために、取っておいたほうが良い資格は何でしょうか?」
このような質問が来たら多くのキャリアカウンセラーは困ってしまいます。
なぜなら、職業柄、様々な資格の流行り廃りを見てきた身としては、3年程度のトレンドを予測することはできても、5年10年先の未来は「遠すぎて予測できない」としか言えないからです。
でも、そのようにそっけなく答えてしまうと、多くの相談者をガッカリさせてしまいます。
そこで今回のコラムでは、分かりにくい未来のために今できることについて、スティーブ・ジョブズの言葉を題材にお伝えしていきますね。
さて。
皆さんは、アップル創業者スティーブ・ジョブズが2005年のスタンフォード大学の卒業式で行った伝説のスピーチをご存じでしょうか?ご存じない方はぜひ「スティーブ・ジョブズ 伝説のスピーチ」で検索してみて下さい。日本語訳も見つかるはずです。
彼のスピーチは、私たち一人一人のキャリアに役立つ多くの示唆に富んだものでした。その中からキャリアカウンセラーの立場で特に大切だと思う事をいくつか紹介させていただきます。
1. 今やっていることが未来のどこかで役立つと信じる
スティーブ・ジョブズは大学を中退しています。しかし、退学までの期間に、自分が興味を引かれたカリグラフ(飾り文字)の講義を受けました。飾り文字、スペースのあけ方など、文字を美しく見せる秘訣を学んだのです。
彼は、その時に心惹かれたものを追い求めただけだったのです。ところが10年後、最初のコンピューターを設計していたとき、カリグラフの知識が蘇ってきたのだそうです。これが、美しいフォントを持つ最初のコンピューターの誕生のきっかけになりました。
彼はスピーチの中で、「将来を予測して、点と点をつなぎあわせることなんてできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、あなたは今やっていることがいずれ未来のどこかでつながると信じるしかない。」
(原文:You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. )
と話しています。
未来に確実に役に立つと保証されたものはありません。だから、自分の心が動くものに触れ、その時々に納得できる点を打ち続けることを意識していくと良いでしょう。自分が想像もしなかったタイミングで役に立つ日が来るはずです。
2.探し続ける
キャリアカウンセリングをしていると、「いつか夢が叶えばいいのに」と願う割には自ら行動しない相談者の方が多いという印象を受けます。
・自分の適性を上司が見ていてくれて、自分に合った部署に異動させてくれるのを待っている
・これといってやりたいことはないから、与えられた仕事を真面目にやっている
・いつか、やりがいのある仕事、熱中できるに出会いたい
こんな風に思っていませんか?
ジョブズは、「もしまだ(心が動くような仕事を)見つけられていないのであれば、探し続けなさい。落ち着いてはいけません。見つけたときには、心がそれだと教えてくれるはずです。」
(原文: If you haven't found it yet, keep looking. Don't settle. As with all matters of the heart, you'll know when you find it.)
と言っています。
他者から与えてもらうこと、偶然出会うことを待っていてはいけません。自分で探すのです。そして、たとえ強い感情が湧かなくても、心地よいこと、楽にできること、苦にならないことに目を向けてみましょう。そこにヒントがあるはずです。
3.自分の内なる声を大切にする
このコラムの最初に、「今、どのようなことをしておけば、この先役に立つでしょうか?」「将来のために、取っておいたほうが良い資格は何でしょうか?」とこのような質問が来たらキャリアカウンセラーは困ってしまうと書きました。
実は私はこの質問に対して、一定のトレンドをお伝えした後「でも、あなたはそれを勉強したいですか?」とも聞くのです。
ジョブズはスピーチの中で「他人の考えに溺れて、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。」
(原文:Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition.)
と言いました。
この情報であふれた世の中で、自分と向き合い、自分の心の動きに耳を澄ませることは、ある種の恐怖を伴うことで、自分の直感よりも他人のレビューの方が信頼できると思うかもしれません。
しかし、他人から言われてする勉強や、自分の心が真に求めていない資格は結局身につかないことが多いですし、苦しい思いをして学んでもトレンドが変わったり職場が変わったりしたら全く使えなくなってしまう可能性も高いのです。ですから、あくまで自分で感じ考えて選択することが大切なのです。
さて、いかがでしたでしょうか?
ジョブズの言葉は、情報や他人の声に流されがちな私たちに、「自分の未来は、自分で作っていくんだよ」とエールを送ってくれているのかもしれませんね。
今と未来は一続きの時間軸の中にあります。自分らしい一歩を、自分らしいキャリアを築いていきましょう。
山口奈生(やまぐち・なお)
1982年岩手生まれ。
学校卒業後、損害保険会社にて営業や社員教育部門を経験したのち、配偶者の留学に伴い米国へ。
帰国後2014年に国家資格キャリアカウンセラーを取得し人材紹介会社転職。
これまで大学生から社会人まで広くキャリアカウンセリングを対応
2017年に配偶者の転勤により再度、米国に引っ越した後に、人材系ベンチャー企業にて新規事業立ち上げを経て、翌年2020年7月ワタシル合同会社を設立。
*ワタシル大学Instagram:https://www.instagram.com/watashiru_college/
*ワタシル大学Twitter:https://twitter.com/watashiru_cl
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