第2回 キャリアカウンセラー山口奈生(やまぐち・なお)さんによるハッピーコラム♡
こんにちは、キャリアカウンセラーの山口です。
先日ワールドカップのカタール大会が閉幕しました。
日本代表の胸躍る活躍もさることながら、現地に駆け付けた日本人サポーターの礼儀正しさや試合後にスタジアムのごみを拾ってから帰っていく姿は全世界に日本人の美しい姿を広めていったと言っても過言ではないでしょう。
私が今住んでいるアメリカでも、日本というのは清潔で文化的な国であり、日本人というのは「勤勉で真面目」というイメージを持たれます。
ところが、そんな日本人が実は、「学ばない国民」であるということはご存じでしょうか?
パーソル総合研究所が2022年の11月に公開した「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/global-2022.html)によると、日本人の労働者(就業している20~69歳)の実に52.7%が社外の学習を「何もしていない」と答えています。
この数字は、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米にある18カ国の中で最も高く、「読書」「研修・セミナーへの参加」「資格取得のための学習」「通信教育」「大学・大学院・専門学校」…など9種類の学習への参加割合もほとんどすべての項目で調査に参加している国の最下位という結果が出ています。
勤勉で真面目な日本人がなぜ…?
と思った方、実はこれは「社外の学習」というところに秘密があるのです。
これまで日本では、終身雇用が一般的であり、会社が社員を確保するために行う社内研修やOJTなどが盛んでした。
そのため、会社が与えてくれる学習機会で十分と考え、社会人が社外で学ぶという文化が形成されませんでした。
対してアメリカでは、転職が盛んであり、Twitter社がイーロン・マスク氏によって買収された後、大量の社員が一瞬で解雇されたように、解雇されるリスクの高さも日本の比ではありません。そのため、会社に頼らずに自己投資して学んでいくべきという文化があるのだと思います。
実際にキャリアカウンセリングをしていると、日本とアメリカの労働者に非常に大きな差を感じる瞬間があります。それは、「スキルに関する考え方」です。
日本ではまだまだ「今あるスキルを活かした」転職が一般的です。
そのため出産や育児で働いていない期間があると、自分が社会人としての能力を失ってしまったという自信のない状態に陥り、「そんな私でもできる仕事はないでしょうか?」と相談にくる方がとても多いように感じます。
しかし、アメリカでは「今自分にないスキルを身に付けた状態でキャリアを作っていく」という意識を持つ方が多いように感じます。
例えば、出版業界で働いていた私のアメリカ人の友人は、子育てのために10年仕事をしていませんでしたが、週に2日大学で学び、最新の業界知識とスキルを身に着けて再就職しました。
大学で学び直してからの就職というのは日本では珍しいケースだと思いますが、アメリカではパーソル総合研究所 「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/global-2022.html)でもわかる通り、調査対象である20~69歳の労働者の12.7%が大学・大学院・専門学校で学んでいます。
およそ労働者の8人に1人と考えると、驚くべき数字と言えるのではないでしょうか。
実際に、私が通っていたコミュニティカレッジにも、二十歳そこそこの若者に混ざって、キャリアチェンジのために学ぶ多くの30代~50代、時には60代の大人がいました。
私のクラスメイトだった元アメリカ陸軍の兵士の40代男性はPTSDを抱える退役軍人のためのカウンセラーになるために心理学を学んでいました。
もちろんそこには、大学での学びに価値を置くアメリカの企業文化があることは見逃せません。
しかし、学びによって積極的に自分のキャリアを切り開いていく姿はとても素敵だなと思います。
日本とアメリカの違いで言うと、もう一つ大きく違うのが転職マーケットに関する個人のリサーチ力です。
アメリカでは、たとえ今すぐ転職をする気がなくても、求人情報やスカウト情報を把握して、常に今よりも条件の良い仕事、やりがいのある仕事を探したり、そして時には候補企業で働く人に実際に会いに行ったりする方が多いように見えます。
転職マーケットを見ておくことで、その業界の動向や今後の自分に必要なスキルや知識の方向性が見えてきますし、会社の外に情報を取りに行くことで、自分が知っている情報をアップデートすることができます。
つまり、リサーチをすることが、将来の自分の姿を考えることに繋がっているのです。
さて。
日本には日本、アメリカにはアメリカの良さがありますから、私は今の日本がダメだとは思いません。
でも、一つ声を大にして言いたい事があります。
それは、「2023年は、一歩外に踏み出してみませんか?」ということ。
大人になると人間関係が会社の中や昔からの友人だけに限られてしまう事も多いと思います。
しかし、枠を超えていろいろな人と会うだけで新たな気付きや発見がありますし、相手のモチベーションの高さにいい刺激を受けることもあるでしょう。
社外の人が相手であれば、評価を気にすることもなく「教えてください」とも言えるわけです。
岸田首相が2022年の10月初旬に「リスキリング(学び直し)」の支援に今後5年間で1兆円の予算を投じる方針を示しましたし、企業はDX化のために社員のリスキリングに力を入れています。
しかしこれはDX化に限ったことではなく、一番大事な事は、「労働環境や自分仕事自体が将来変わっていくこと(またはなくなること)を大前提として、将来の自分がどうしたいのかを考えてリサーチし、学習をすること」なのです。
あなた自身の価値観や、興味、そして「楽しい!」と思う気持ちをエンジンにして、ぜひ学びに取り組んでみましょう。
大学に通わなくてもOK。
ちょっと興味のあるセミナーに一つ申し込んでみるとか、他社・異業界の方と話をしてみるだけで世界はぐんと広がります。
1回3000円のセミナーを受講してみるのでもいいかもしれません。
あなたの大切なキャリアのために。そして、純粋に楽しいから!
山口奈生(やまぐち・なお)
1982年岩手生まれ。
学校卒業後、損害保険会社にて営業や社員教育部門を経験したのち、配偶者の留学に伴い米国へ。
帰国後2014年に国家資格キャリアカウンセラーを取得し人材紹介会社転職。
これまで大学生から社会人まで広くキャリアカウンセリングを対応。
2017年に配偶者の転勤により再度、米国に引っ越した後に、人材系ベンチャー企業にて新規事業立ち上げを経て、翌年2020年7月ワタシル合同会社を設立。
*ワタシル大学Instagram:https://www.instagram.com/watashiru_college/
*ワタシル大学Twitter:https://twitter.com/watashiru_cl
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